税金・確定申告

【シミュレーション】フリーランスエンジニアの手取りは多い?少ない?

Twitterなどで

  • 「税金でたくさん取られるから全然残らない」
  • 「2倍稼いでトントンでしょ」
  • 「こいつフリーランスのくせに税金のこと全然わかってねーよ。プププ」

といった発言をよく見ると思います。

フリーランス検討中の人からすると「実際どうなの?」って感じだと思うので、手取り額の計算方法解説とシミュレーション結果を紹介します。

記事を読み進めながら一緒にシミュレーションしてみてください!!

フリーランスエンジニアの手取り額とは?

売上高から経費、税金、社会保険料を引いた額が手取り額です。

手取り額 = 売上高 - 経費 - 税金 - 社会保険料

フリーランスエンジニアが支払う必要のある税金と社会保険料は下記のとおりです。

  • 所得税
  • 住民税
  • 消費税
  • 国民年金保険料
  • 国民健康保険料

多くのフリーランスエンジニアは準委任契約で働いています。この場合事業性が乏しいため個人事業税は対象外になります。

所得税

課税所得をもとに算出します。課税所得とは売上高から経費と各種所得控除と後述する青色申告特別控除を差し引いた後の額のことです。

青色申告特別控除は青色確定申告する人全員に適用され65万円控除されます。所得控除は「基礎控除」や「配偶者控除」などのことで14種類あります。

「控除」とは差し引くという意味

この課税所得の額を所得税率の表に当てはめて、、復興特別所得税2.1%をかけて計算します。

課税所得税率控除額
1,000円 〜 1,949,000円5%0円
1,950,000円 〜 3,299,000円10%97,500円
3,300,000円 6,949,000円20%427,500円
6,950,000円 8,999,000円23%636,000円
9,000,000円 17,999,000円33%1,536,000円
18,000,000円 39,999,000円40%2,796,000円
40,000,000円 以上45%4,796,000円
令和4年時点の所得税率

例えば課税所得が6,000,000円だった場合、税率20%で控除額は427,500円、復興特別所得税は一律2.1%なので

所得税計算例

(6,000,000 x 0.2 - 427,500) x 1.021(復興特別所得税) = 788,722.5円

課税所得と所得税の計算方法を整理しておきます。

課税所得 = 売上 - 経費 - 青色申告特別控除(65万円) - 所得控除
所得税 = (課税所得 x 所得税率 - 控除額) x 1.021

住民税

住民税は均等割額と所得割額に分類でき、均等割額は所得に関わらず固定で5,000円、所得割額は所得によって変動します。

住民税は地方税法で税率が決まっているので基本的に自治体による差はありません。

住民税の所得割額は課税標準額をもとに算出しますが、所得税の課税所得とは少し違うので注意が必要です。

住民税と所得税違い

  • 税率は10%
  • 所得控除の種類と額が異なる
  • 調整控除がある
    • 複雑なので説明を省きますが、課税基準額が250万円を超える場合は2,500円だと思ってください
均等割額 = 5,000円(都道府県民税+市町村民税)

課税標準額 = 売上 - 経費 - 青色申告特別控除(65万円) - 所得控除
所得割額 = 課税標準額 x 住民税率(10%) - 調整控除(2,500円)

住民税 = 均等割額 + 所得割額

消費税

課税売上高が1,000万円を超える場合は消費税を納めます。ただ、納税した消費税は経費に入れることが可能です。

課税売上高とは

フリーランスエンジニアの場合、特殊なサイドビジネスをしていない限り「売上高 = 課税売上高」と思ってOKです。

土地の売却や貸付、利子のような消費税がかからない売上もあるため、「課税売上高」という言葉になっています。

インボイス制度が始まったら多くの人は消費税を納めることになると思います。インボイス制度については調べてください。

消費税の納税額計算方法の考え方は「売上げに係る消費税額 - 仕入れに係る消費税額」です。

ヨノ

「自分が受け取った消費税」 ー 「自分が払った消費税」の差額を納めるってこと。

「仕入れに係る消費税額」を計算するのはすごく大変なので、「みなしの仕入率を使ってざっくり計算して良いですよー」という簡易課税制度が用意されています。経費が少ないフリーランスエンジニアはこの簡易課税制度を利用すれば節税できます!

みなしの仕入率は業種によって異なり、フリーランスエンジニアの場合は50%です。

ヨノ

フリーランスエンジニアの仕入れ(経費)が売上の50%なんてことはありえないので、簡易課税制度を使った方がお得になるってわけ!!

消費税納税額 = 売上に係る消費税額 - ( 売上に係る消費税額 × みなし仕入率(50%) )

消費税についてもっと詳しく知りたい方は「フリーランスの消費税はいつから払う?課税対象者と納付方法を解説」をご覧ください。

国民年金保険料

複雑な条件はなく、全員同じ額です。

令和4年度の国民年金保険料は月16,590円 → 年間199,080円

前納(前払い)を利用すればちょびっと安くなりますが、今回のシミュレーションでは考慮しません。

国民健康保険料

フリーランスエンジニアが加入できる健康保険は国民健康保険のみです。

この国民健康保険料は住んでいる自治体によって異なるので、正確にシミュレーションするのであれば市区町村のホームページで算出方法を確認してください。

参考までに東京都江東区の国民健康保険料の算出方法を解説します。

区分均等割額所得割額年間限度額
1.医療分
(加入者全員)
加入者数×42,100円加入者全員の年間所得額×7.16%65万円
2.支援金分
(加入者全員)
加入者数×13,200円加入者全員の年間所得額×2.28%20万円
3.介護分
(40~64歳の加入者)
40~64歳の加入者数×16,600円40~64歳の加入者の年間所得額×2.31%17万円
東京都江東区の国民健康保険料
年間所得額 = 売上 - 経費 - 青色申告特別控除(65万円) - 国民健康保険の基礎控除額(43万円)

医療分    = 加入者数 x 42,100 + 加入者全員の年間所得額 x 0.0716 ※ 上限65万円
支援金分  = 加入者数 x 13,200 + 加入者全員の年間所得額 x 0.0228 ※ 上限20万円
介護分    = 40~64歳の加入者数×16,600 + 40~64歳の加入者の年間所得額 x 0.0231 ※ 上限17万円

国民健康保険料 = 医療分 + 支援金分 + 介護分

フリーランスエンジニアの場合はそこそこ収入が良いので、上限額またはそれに近い金額になることが多いでしょう。

「任意継続」という会社員時代に加入していた健康保険を2年間継続できる制度があります。
これを利用すれば、フリーランスエンジニアの最初2年間は健康保険料を抑えることが可能。

【シミュレーション】フリーランスエンジニアの手取り額

それでは実際にシミュレーションして手取り額を算出していきます。

シミュレーション条件は下記のとおりです。

年齢40歳未満
月単価税抜:760,000円
税込:836,000円
年間売上10,032,000円
この内消費税が912,000円
消費税課税事業者で簡易課税制度(みなし仕入率50%)
個人事業税無し ※ 準委任契約であれば事業性が乏しく対象外
確定申告青色申告
扶養家族無し(独身)
小規模企業共済等掛金控除iDeCoに上限額(月68,000円)拠出
経費月10万円+前年度分の消費税納税額
シミュレーション条件

年齢は40歳未満で独身、売上(年商)は10,032,000円で消費税の課税事業者、月の経費は月10万円と前年の消費税納税額とします。

経費の内訳

  • 家賃・ネット回線代・電気代などの固定費の按分7万円
  • PCや周辺機器、書籍代、交通費、その他雑費で3万円

そして、節税と老後対策のためにiDeCoに月68,000円拠出(上限額)、個人事業税の納税義務は無し。

先述したとおり
納税した消費税は経費に入れることが可能
準委任契約のフリーランスエンジニアの場合は個人事業税の納税義務は無い

経費(消費税納税額含む)

月10万円なので年間120万円。消費税納税額は簡易課税制度を利用する場合で計算します。
売上に係る消費税(受け取った消費税)は912,000円なので、経費は年間1,656,000円

経費 = 100,000円 x 12ヶ月 + (912,000円 - 912,000円 x 0.5) = 1,656,000円

国民年金保険料

令和4年度の国民年金保険料は月16,590円です。

年間199,080円

国民健康保険料

自治体によって異なりますが、東京都江東区の場合で計算します。シミュレーション条件は40歳未満のため介護分の保険料は不要です。

年間所得 = 10,032,000 - 1,656,000 - 650,000 - 430,000 = 7,296,000円

医療分   = 1 x 42,100 + 7,296,000 x 0.0716 = 564,494円
支援金分 = 1 x 13,200 + 7,296,000 x 0.0228 = 179,548円
介護分   = 0円

国民健康保険料 = 564,494 + 179,548 + 0 = 744,042円

国民健康保険料は744,042円

所得税

今回のシミュレーション条件の場合、iDeCoに加入しているので「小規模企業共済等掛金控除」が適用され、掛金の全額が所得控除になります。その他「基礎控除」、「社会保険料控除(年金・健康保険料)」も適用されます。

課税所得 = 売上 - 経費 - 青色申告特別控除(65万円) - 所得控除
所得税 = 課税所得 x 所得税率 - 控除額

売上10,032,000円、年間経費1,656,000円、基礎控除480,000円、社会保険料控除943,122円(国民年金保険料199,080円+国民健康保険料744,042円)、小規模企業共済等掛金控除816,000円(iDeCo掛金 月68,000円x12ヶ月)を上記の計算式に当てはめると

課税所得 = 10,032,000(売上) - 1,656,000(経費) - 650,000(青色申告特別控除)
            - 480,000(基礎控除) - 943,122(社会保険料控除) - 816,000(小規模企業共済等掛金控除)
        = 5,486,878円

所得税 = (5,486,878 x 0.2 - 427,500) x 1.021 = 683,943円

所得税は683,943円

住民税

今回のシミュレーション条件で適用される所得控除は、所得税の場合と同じで「基礎控除」、「社会保険料控除」、「小規模企業共済等掛金控除」の3つ。ただし基礎控除の額が異なるので注意。

課税標準額 = 10,032,000(売上) - 1,656,000(経費) - 650,000(青色申告特別控除)
             - 430,000(基礎控除) - 943,122(社会保険料控除) - 816,000(小規模企業共済等掛金控除)
         = 5,536,878円

所得割額 = 5,536,878 x 0.1 - 2,500 = 551,188円
均等割額 = 5,000円
住民税 = 5,000 + 551,188 = 556,188円

住民税は556,188円

手取りシミュレーション結果

売上10,032,000円
所得税683,943円
住民税556,188円
経費(消費税納税額含む)1,656,000円
社会保険料1,019,080円
手取り6,116,789円
手取りシミュレーション結果

手取り額約611.7万円という結果になりました

年収800万円の会社員の手取り額が約600万円なので、売上1000万なら年収800万円の会社員と同じくらいと言えます。

手取り額とは違う自由に使える額

シミュレーションの結果、売上1000万なら手取り額は約612万円で年収800万円の会社員と同じくらいとなりましたが、この612万円が自由に使えるお金というわけではありません。

(今回のシミュレーション条件だとそんなに変わらないですが)

ポイント

  • 節税・老後対策のためのiDeCoの掛金は老後まで使えない
  • 経費の中に生活費が入っている

iDeCoの月68,000円は自由に使えません。一方、経費に含めた固定費はフリーランスに関係なく発生する生活費なので自由に使えるお金と言えます。

今回のシミュレーション条件では「家賃・ネット回線代・電気代などの固定費の按分で月7万円」としたので、生活費7万円を経費に入れていることになります。

ここらへんを加味すると自由に使えるお金は614万円(今回のシミュレーション条件では大差ありませんでしたね...)

自由に使えるお金 = 6,116,789 - (68,000 x 12) + (70,000 x 12) = 6,140,789円

フリーランスになる場合、手取りだけではなく「自由に使えるお金はどれくらいか?」という視点も重要なので意識しておきましょう。

経費の使いすぎには注意

「なんでもかんでも経費に入れてしまえば自由に使えるお金が増えてお得!!」というわけではありません。

会社員の場合の経費は会社のお金ですが、フリーランスの場合は自分のお金です。不必要に経費を使うのは、ただの無駄遣い。

また、経費が多いと利益が少なくなります。利益が少ないと社会的信用も低くなり、賃貸契約時の審査や住宅ローンの審査に通らなくなる場合もあります。

経費を会社員と同じ感覚で捉えると痛い目にあうので気をつけてください。

【まとめ】フリーランスエンジニア手取りシミュレーション

売上1000万でシミュレーションした結果、年収800万円の会社員と同じくらいという結果になりました。

多いと感じる人も少ないと感じる人もいるでしょうが、給与所得者で年収800万円超は9.2%という現実を考えると十分多いと言えます。

もちろん「売上を維持できないリスク」、「社会保障が会社員より劣るリスク」、「売上が上がる可能性(単価UPや複数事業)」などなど様々なリスクや可能性をふまえて判断すべきですが、今回のシミュレーション結果がフリーランスエンジニアを検討する際の判断材料の1つになれば幸いです。

自分がどのくらいの単価狙えそうか知りたい方はエージェントに相談することをオススメしています。狙える募集中の案件と単価を教えてくれので参考になりますよ。

ヨノ

私はギークスジョブに相談した結果「まだちょっと早いな」と感じ保留。
その1年後にフリーランスになりました。

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